●最初に着用されたのは…●
そもそもベストはヨーロッパでは、中世からの伝統的な上着でした。袖のないジャケットで、さまざまな装飾が施された正装の一つだったのです。
現在のような「スリーピースの1つ」として着用したのは、イギリスのチャールズ2世が最初だったといわれています。
1666年10月7日、コートとベスト、半ズボンという姿で現れたチャールズ2世は、「私は本日より衣服を改める」と衣服改革宣言をしました。今のスーツの原型がこのときにできあがったのです。しかし、この際のベストは、膝まで届くほど丈の長いものだったようで、その後、長い年月を経て丈が短くなっていったといわれています。
また、当時のベストは内着的な意味合いのある洋服ではなかったため、ジャケットと同等(もしくはそれをしのぐほどの)装飾が施されていました。公共の場で、ジャケットを脱いでも、シャツ一枚という無礼な姿を見せないために着られたのがベストです。そのため、派手な装飾がされていたわけです。
●日本での広まり●
1871年(明治4年)、日本で服制に関する評定が開かれましたが、このときに洋服の採用が決定されたといわれています。
洋服を採用する際、手本としたのがイギリスのスーツです。そして、シャツ(とネクタイ)、ジャケット、ベスト、パンツというスーツの基本スタイルが日本に広まっていったのです。
●ベストの流行●
今日、ベストはスーツの内着として着用する以外に、「ファッションアイテム」としても定着しつつあります。その原型は、60年代後半でした。
当時、アメリカではヒッピーが大流行しており、それに伴い、ファッションもいわゆる「ヒッピーファッション」が流行。ロングヘアーにヒゲ、そして洗いざらしのジーンズにナチュラル素材のシャツ、素足などのファッションを身につけた若者が巷にあふれました。
そもそもヒッピーはサンフランシスコの貧民街での黒人暴動がきっかけとなった「愛や平和、自然への回帰」をテーマとした主張なのですが、日本ではそのファッションだけが注目され、根付いたのでした。
そのヒッピーファッション流行の際に、「ヒッピー・ベスト」と呼ばれるアイテムも流通しました。
サイケデリック・アートを思わせるような、派手な色と柄使いのロングベストがそれで、ベルボトムのデニムやグランパTシャツに合わせて着るのがオシャレでした。
その後、ヒッピーブームの終焉とともに影の薄くなったベストですが、ここ数年、再び注目を集めています。海外でトップモデルがオシャレなベスト姿を公開し、話題を生んだこともあり、アパレルメーカー各社が「ジレ」という名称を使い、新たに売り出しているのです。
新たなファッションアイテムのひとつとして、定着しつつあるベスト(ジレ)。今後は必須アイテムとなる予感がします。